伝え方の研究結果
ある研究所で「どうやったら確実に相手に伝えられるか?」という研究が続けられていた。
A博士は、難しいと云われているその研究を黙々と続けた。
ボディランゲージからテレパシーまで、伝えることに関する、ありとあらゆる角度からの検証を繰り返していた。
「伝える」と一言でいってみても、相手のその時の状態や価値観でも変化し、相手との信頼関係によっても変化する。
- インパクトがあればよいのか
- 物語性があればいいのか
- それともあらゆる角度から伝えればいいのか
- 何度も同じことを伝えるしかないのか…
と、実験は繰り返された。
すると…
ある結論に行き着くことになった。
その結論とは?
「伝える内容に意味があるのか、意味がないのか」それは殆ど関係が無い、という結果になったのだ。
もっとも伝えたい(脳内の記憶に残してもらいたい)言葉を、一言に集約すること。それはまるで第一線で活躍している芸能人のように「瞬間、瞬間の言葉遊び」ともいえる伝え方となった。
もっといえば、全く意味の分からない、外国の言葉でも伝えられることが証明された。
その結果…
A博士は、その実験結果を証明するため、選挙に出馬することを決断した。
だが落選してしまった。
しかし、それで証明されたことがあった。
後に投票した人へアンケートを取った結果、覚えていた内容は、以下の一言だけだったのだ。
「A博士」
A博士は、伝わるだけでは、何の意味もないことを悟ったのであった。